1.ホグワーツ特急にて  10時30分ぴったりに、私はキングズクロス駅にいた。

(肝心の待ち合わせ場所、決め忘れてたけど、どうしよう)



仕方がないからルシウスのところに姿現しするか、とも思ったが
何せ"今年入学です!"オーラを放つこの年格好でそれはできない。
どうしよう、と思った矢先に、キラキラ光るブロンド一家が視界に入った。

(わかりやすい親子…)

そう思いながらも荷物をがらがら引きずりルシウスの元へ駆け寄る





「ルシ…あー…ミスター・マルフォイ?」

あやうくルシウスと呼びかけた私はもごもごする。

「お前…あぁ…おはようレアリー」

ルシウスは私が誰だったかわからなかったらしく、一瞬怪訝な顔をした。
(見知らぬ子供に御自慢のローブを引っ張られて、さぞ苛立っただろう)
(そんなルシウスの後ろでナルシッサは「かわいい!と小さく叫んだ」)



「父上、この方はだれですか?」
「こちらはレアリー・ベッカー。古い友人の娘さんだ。レアリー、こちらは息子のドラコだ。」
「初めまして」とワンピースの裾をつまんで軽くお辞儀すると、ドラコも軽くお辞儀し返した。

「それでは、父上、母上、行ってまいります。」
胸を張って挨拶をするドラコは澄ました顔だ。

「家名に恥じない言動をな」
「気をつけるのよ、ドラコ!」

ドラコは鞄をゴロゴロと転がしながら柱の方へ向っていく。


「お前も、気をつけて」
「二度目のホグワーツ、楽しんでね」
「えぇ、ありがとう。行ってきます。」

ドラコがこちらを振り返って待っている様子なので慌てて行こうとする。

「今年は"例のあの子"も入学だ」

ぼそり、と耳元で囁くルシウス。

「言いたいことはわかっているわ、ルシウス」




じゃあ、行ってきます、と手を振り、ドラコの元へ向かう。




まだ時間が早かったため、私とドラコはコンパートメントをすぐに見つけられた。











「君はどこの寮が良いんだ?」

ドラコがりんごをかじりながら尋ねる。

「私はスリザリンが良いわ。家系も代々スリザリンだし」
「僕もだ。スリザリン以外ありえないね。」

フン、と鼻を鳴らすドラコ。
グリフィンドールなんかになったら学校をやめる、と豪語する彼を見て
ルシウスの純血スリザリン教育の凄まじさに苦笑した。

「じゃあ同じ寮かもね。そのときはよろしくね」
「こちらこそ」

ドラコがりんごに再びかじりつくと同時に、デカイ岩の様な2人組がコンパートメントに飛び込んできた。

「ドラコ!あっちのコンパートメントにハリー・ポッターがいるって!」

岩のうちの1人が興奮してドラコに報告する。

「なんだって?」

ドラコはりんごを置き、2人組に着いて走っていく。



「はぁ…」

私はローブに着替え、そのあとを追う。















「うわぁああああああ!!!!!!」

やっと追いついた、と思ったら、今度は岩二人とドラコが悲鳴を上げ、
今自分が走ってきた道を逆走する

「え、ちょっと、ドラコ!」



残された私は今までドラコたちがいたコンパートメントをチラリ、と見る。
案の定嫌な顔をしてこちらを見ている男の子が2人居た。

「あ、えーっと…レディを置いて行っちゃう男の子って、ダメよね」

ははは、と軽く笑って見せると、赤毛の男の子が私を怪訝な顔で見つめる

「君、あいつの友達?」
「えぇ、まぁ」

私の答えを聞くなり、おえぇ、と言い、更に嫌な顔をする

「あいつはやめといた方がいいよ、マルフォイ家って本当にロクでもないやつらだから」
「んー…そうかも、ねぇ…とにかく、あなたたちにドラコが何かしたなら謝るわ、ごめんなさい。」

私は微妙な笑顔を作って見せる

「別に、君が謝ることじゃないさ」

座る?と尋ねてきたのは黒髪の男の子
私はありがとう、と言ってコンパートメントの中に入った。


「自己紹介がまだだったわ、私、レアリー・ベッカーといいます」
「僕はロナルド・ウィーズリー。ロンでいいよ」

赤毛の男の子は機嫌がよくなったみたいで、握手を交わす

「僕は…ハリー・ポッターだ」
「あら、あなたが!」

黒髪の男の子は恥ずかしそうに頷く

「もっと悪い顔をしている人なのかと思ったわ」と冗談めかしてやるとハリーとロンは笑っていた。






「ところで、もう少しでホグワーツに着くみたいよ。ローブに着替えた方が…」

と、私が言いかけた時、コンパートメントのドアがガラガラと音を立てて開いた。



「あなたたち、ネビルのカエルを見なかった?」



茶色のくるくるした髪の毛をした気の強そうな女の子が仁王立ちをしている。



「見てないよ」
ごめんね、とハリーがロンの言葉に付け加える

「あなたは?」
「私も見ていないわ、ごめんなさい。」

肩を竦めてみせると、その子は「仕方ないわ」と言って軽くほほ笑む

「私はハーマイオニー・グレンジャー」
「レアリー・ベッカーです」

ハーマイオニーが握手を求めてきたので、私はそれにこたえる。
チラ、と横目でハーマイオニーが後ろの二人を見る。

「ロナルド・ウィーズリー」
「ハリー・ポッター」

と自己紹介をする。



「レアリーはもうローブに着替えているけれど、あなたたちもそろそろ着替えるべきよ。」
「あぁ、君がくる丁度前にレアリーに言われたよ。」
「僕たち着替えたいんだ、もう出てってくれないかい?」

ロンがまた不機嫌になりだし、ハリーもそれを見て頷く。

「じゃあまた、お城でね」と一言ハリー達に残し、私とハーマイオニーはコンパートメントを出た。




「私のコンパートメント、ここだわ。」
「私はもうちょっと先なの。」
「そう。じゃあまた、お城でね」
「うん、それじゃあ」

私はハーマイオニーに別れを告げ、ドラコのいるコンパートメントへと戻った。







「遅い」

こいつも不機嫌なのか、とうんざりするような顔で私を睨むドラコ。

「ごめんなさい。少し話しこんでいたの」
「あんまりしょうもないやつと話すのは賢明だとは言えないと思うよ」

キィ、と列車が止まる音がする。

「ほら、行くぞ」

ドラコはサッと私の荷物を持ちあげ、コンパートメントを出る。



(紳士なんだか、よくわからないわ)

私は軽くためいきをついて、ドラコの後を追うのだった。





外に出れば、目に飛び込んでくるのはそびえ立つホグワーツ城。
ドラコが足を滑らせるな、とか、道が不安定だから気をつけろ、とか
ごちゃごちゃ私の心配をしていたけれど、私は夜にそびえ立つその城から目を離せずにいた。




 


2010.1.4 shelly