15.
ドラコはどうしているのだろう?
ベラに会えた喜びで手紙さえ送っていなかった自分を後悔した。
もっとも、ルシウスにはホグワーツには一切の郵便物を送るな、と止められていたのだが
何か別の方法で手紙くらい送れたのではないか、とも思う。
ダンブルドアに尋問されていないだろうか?
他の生徒に何か言われていないだろうか?
それらによって嫌な思いをしていないだろうか?
城を出るのもこっそりやればよかった。
(冷静になった今ではそう思えるが、あの時の私は興奮状態だったし、仕方ない。)
嫌な言い訳ばかりを頭で考える。
そうしたところでドラコに迷惑は大なり小なりかかっているのに。
「」
ドン、とベラに背中を押され前へ出る。
そして顔を上げた瞬間に、自分は今何を考えていたのだろうと思った。
「わ、我が君」
「散漫な女だな、相変わらず」
ルシウスは神経質にそわそわしていたが、帝王がククク、と笑ったのを見、それをやめた。
「城の内部事情が気になるのであろう?」
「いえ、決してそんなことは…」
「隠さなくて良い。俺様には手に取るようにわかる。」
またもやククク、と笑う帝王。
「そこで、だ」
帝王の言葉に死喰人一同が静かに彼を見つめる。
「アレとの繋がりを本格的に利用する。」
意味を理解したベラはニヤリ、と笑う。
「お前もそろそろ死喰人らしい仕事に戻れ、よ」
「はい、我が君」
「ホグワーツの勇気ある小さいお友達にも会えるだろう、楽しめ」
派手にやりすぎるなよ、と付け加えた帝王はまたククク、と笑った。
「お前もお前の母親も、多少残虐なところがあるからな」
「仰せのとおりに」
「それから―――――――」
一歩、帝王が私に近づく。
私はごくり、と唾を飲み込み頭を深く下げる。
「ベラトリックスの術は、ほぼ完成と言って良いだろう」
ベラは歓喜に震える。
「ベラが投獄される前に私に託していてくれたので、自らにかけてみましたが、
かけたり解いたりを頻繁にしない限りは弊害はほぼないと思われます。」
「そのようだな」
帝王はもう一歩私に近づいたので、私は更に深く頭を下げた。
しかし私は顎をぐい、とつかまれ、帝王の赤眼と視線がからまる。
「ベラトリックスが絶対、か」
またククク、と笑う帝王。
私は恐怖で何も言えないまま見つめ続ける。
「お前の母親もそうだった。あいつを亡くしたのは痛手だったな」
ベラトリックス同様の信用を得ていた、とルシウスが昔言っていたのを聞いたことがある。
「お前は、母親やベラトリックスの様に、俺様に忠誠を誓えるか?」
「もちろんです、我が君。」
私の目に嘘はなかった。
ベラの様になりたいと思ったし、ベラが絶対である。
そしてそのベラが敬愛してやまない帝王は、私にとっても絶対なのであるから。
私の目を見た帝王はニヤリ、と口角をあげ、掴んでいた顎から手を離す。
くるり、と帝王が私に背を向けた瞬間に、背中に一気に汗が流れた気がした。
「3日後、神秘部だ」
それだけを言い残した帝王は、音も立てずにそこから消えたのだった。
マルフォイ邸に戻ると、ベラが「顎を掴まれるなんてうらやましい!」と騒いでいたが
私はまだ冷や汗が止まらなかった。
そんな私を気づかって、ナルシッサが美味しい紅茶を出してくれる。
「本当に殺されるかと思った、しぬほどこわかった」
「大丈夫よ、あなたのお母様はとても忠実な死喰人だったのだから」
そうナルシッサに優しく言われ、私はコクリ、と紅茶を喉に落とした。
「でも、」
カチャ、とカップをソーサーに乗せる。
「神秘部、楽しみだわ。何しろ本部の仕事は久々だからね」
そう言ってニッ、と笑った私を見て、ベラもニッと笑ったのだった。
2010.2.5 shelly
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