7.  !久しぶりだな!」

クリスマス以来だ!と喜ぶドラコは、
もう"あの術"をかけていない状態の私の身長を軽く抜かしていた。

「うっわ、ドラコ大きくなったね〜〜」
「もうこれでデコだのチビだの言われなくて済むな」
「あ、そっか髪型も…いじるポイントなくなっちゃったじゃん!」

フン、と鼻で笑うドラコ。




、話がある。仕事の話だ。書斎に来い。」

ドラコとの会話を遮って話し出すルシウス。

「うわーなんだろ。ごめんドラコ、またあとでゆっくり!」

そう言い残し、私はルシウスの後に続く。





「クィディッチの試合の日だが―――――」

事の詳細を話すルシウス。

「わかったわ。久しぶりに付けるわね、あの銀のマスク…」



不意に目眩に襲われ、こめかみを押さえる。

?」

ぐわん、と世界が回って、体から力が抜ける
間一髪で床に倒れ込む前にルシウスが抱き抱えた。

「なんだろ…疲れてんのかな…」

ごめんね、と立ち上がると、ルシウスは難しい顔をする。

「恐らくは日常的にあの魔法をかけているせいだろう」
「なんだか一気に老け込む気分ね」



自分でも気づいていた。
1年目に比べてこの術を解いたりかけたりするときの負担が大きいのだ。

しかしまだ未完成だと言われているこの術の完成度を証明できたら、と思うと
そんな負担を考えている場合ではないと思い我慢をするのだ。

何せこの術は師匠であるベラトリックスがあの方のために発案したものなのだから。




「三度も18歳の誕生日を迎えたなんてきっと魔法界に私だけだわ」
と、笑ってみせ、私は書斎を後にした。






レアリーとしてマルフォイ家に招待をされている日の朝、私は術をかけるためにマルフォイ家を後にすることにした。


も試合に来ればいいのに」

と文句を言うドラコ

も忙しいんだ、わがままはよしなさい」
とルシウスが言う。

「ごめんドラコ、私、いろいろと事情があって行けないのよ…」
「なんだよ事情って」
「大人の事情よ」
「お前大人か本当に?そういえばの年齢って…」
「レディに年齢を尋ねるのはタブーよ、ドラコ」




とデコピンをし、「またね」と言い残した私は指を鳴らして姿を消した。











―――――眠たい。
朝の4時から起きっぱなしで睡魔にやられそうだ。

クィディッチの試合中、隣で白熱するドラコを尻目に、
私は今日一日で一体何回歳を取ったり若返ったりするのだろう、ということばかりを考えていた。

(試合早く終わらないかしら)

特別クィディッチが好きなわけでもない私は退屈で仕方がなかった。
白熱するドラコも、態度は冷静であれ目が輝いているルシウスも大いに試合を楽しんでいるようで
興味がない私とナルシッサは顔を見合わせてクスリ、と苦笑した。

(クラムってなんだか脳みそも筋肉って感じー。)


そんなことばかり考えていたら試合は終わっていて、
ドラコはあれがあぁだったとかどうすればよかったのにだとか熱心に試合の話をしている。
ナルシッサと私はだんだんうんざりしてきて、大きなため息をつく。







突如外で爆音がし、ナルシッサがピクリ、と反応する。
「二人とも、テントを出て北側の森にいなさい、ここは危険よ」と言うと、
ドラコは話をやめ、私の手を引いて外へ出た。

「なるべく早く森に行こう、レアリー。…レアリー?」




ごめんねドラコ、私には仕事があるんだよね。

ドラコが無意識に握ってくれていた手を雑踏に紛れながらスルリと抜けて、私はテントに戻る







「あぁ!ドラコは?」

ナルシッサは元の姿に戻った私見るなり駆け寄り、心配そうな顔で私を見つめる。

「森に入る手前で巻いてきたわ。大丈夫、ドラコを襲ったりするやつは私が叩きのめしにいくから。」

杖を一振りして銀のマスクを付ける。

「それじゃシシー、行ってくるわね」



気をつけてね、というナルシッサを置いてテントを飛び出す。













大混乱、と言えば良いのか。
マグルが次々と襲われている。
あちらこちらで炎が上がり、焦げ臭い香りがツン、と鼻を突く。




「ちょっとルシウス、探したわよ」
「遅かったな」
「黒いマントで御自慢のサラサラブロンドが見えないんですもの」
と言うと、ルシウスはフンと鼻で笑う。

「まったく親子揃って人を鼻で笑うっていう嫌な癖がそっくりなんだから。」

テントをひっくり返しながら言う。

「あぁあぁ、あたしマグルじゃなくてよかったわぁ…」

こんな悲惨なの嫌だもの!と言うと私は、杖を空に向ける。



――――打ち上げた闇の印は真っ暗な空によく映えた。






恍惚と空を見上げていた時、ふと人ごみの中にドラコが目に入った。

「あの子…!!森に行かなかったのね!!!」

ルシウスを置いて駆け出す
恐らく自分を探しているのであろうドラコの姿に、チクリと心が痛んだ。


「ドラコ何やってるの!シシーに森に行けと言われたはずでしょう!」
お前何やって…ってその格好…」
「魔法省のやつらが来たわ…」


背後に感じる近づいてくる5つの気配


「透明呪文をかけてあげるから、とりあえずそこの木の陰に隠れていて。話はそれからよ。」

有無を言わせず杖でドラコを突くと、みるみる透明になる。
私は銀のマスクをつけなおし、振り返ると5人の闇払いがいた。





「マスクを外して両手を挙げろ」

私に杖を向けて言う闇払い。

「お久しぶりね、皆さん」



杖を一振りすると、銀色の髪の毛と薄紫色の瞳が姿を現した。

「「「「「…!!!」」」」」

久しく人前に姿を現さなかっただが、その名を知らぬ闇払いはいない。




―――絶対に魔法が当たらない女

―――闇に魂を売った少女




「もうちょっとマシな肩書きにしてほしかったものだわ」

不機嫌に笑う

「死にたくなかったら動くんじゃないよ、6人とも」



後ろでビクリと気配が動くのをは感じた。


(こんな姿を見て)(ドラコはどう思うだろうか)
(でもこれが私の生業であって)
(敬愛する師匠に近づく道に直結しているのだ)




 








2010.1.4 shelly