8.
「クルーシオ!」
闇払いの杖から一斉に緑の光線がにむけて放たれる。
笑顔で杖を優雅に振り、光線を全て払いのける。
「魔法省の人が使っていいのかしらね、それ"禁じられた"魔法よ?」
「クルーシオ!!!!!」
ふふふ、と笑うに死角から光線が放たれる。
木陰にいたドラコはハッと息を飲む。
「だぁかぁらぁ」
バシィッと音がして死角から攻撃を仕掛けた闇払いが吹っ飛ぶ。
「"絶対に魔法が当たらない女"ってあなたたちが私に付けた愛称を簡単に忘れないでよね」
くるり、と後ろに一回転をして光線避け、攻撃をし返す。
回転したときにちらりと見えた、の細い腰に入っている
バラの刺青が白い肌によく映えているな、とドラコは不覚にも見とれた。
「私の師匠であり名付け親のベラをアズカバンにぶち込んだあなたたちを許さないわ」
また一人、闇払いが宙に飛ぶ。
「もっともアズカバン送りにしてくれたのは騎士団員みたいですけどね」
「…ベラトリックス・レストレンジは今日も元気にアズカバンにいるぜ」
嫌らしい笑みで言い放った闇払いに殺意を剥き出しにする。
「あなた、殺されたいの?」
「まさか」
危うく挑発に乗りかけたが、遠くから闇払いがちらほらとこちらに来る様子がうかがえたので
私は杖を空に向け、印を打ち上げる。
その瞬間、バーーーンッ!と爆音がしたかと思うと、
ドラコはに腕を捕まれ、森の中にいた。
「ドラコ、大丈夫?怪我はない?」
「あ、あぁ大丈―――」
「よかった…!!!」
無意識にわたしはドラコに抱き着く。
ドラコの心臓の音が響いた。
「?!」
「私あなたに何かあったらどうしようかと…でも無事でよかった…!」
何かをドラコが言おうとしたが、とめどなく溢れる涙がそれを遮った。
なぜ、挑発に乗らなかったのだろう?
(いつもなら血まみれになってでも全員一人残らず息の根を止めるのに)
なぜ、涙があふれるのだろう?
(泣いたのなんて、どれだけ久しぶりなことか)
「ドラコ、そういえばガールフレンドは?一緒じゃないの?」
「あ、レアリー!そうだ探さないと!」
ドラコはハッと思い出したように焦りだす。
ドラコがレアリーを探しに行ったら魔法をかけ直してドラコの元にレアリーとして行こう、と私は考えていた。
「ほら、探しに行っておいで。こんな夜に女の子を一人にしちゃダメよ。」
「あぁそうだな。――――でも、君も女だ。一人には出来ない。」
「何言ってるの、早く探しに行かないと!もし死喰人と遭遇したら―――」
ふわり、と空気が暖かくなる
5つも年下のくせに、体は私よりも大きいからすっぽりとおさまってしまう。
「それ、死喰人のが言えるセリフか?」
(あぁそうだった、ドラコは一部始終を見ていたんだった)
更にきつく私を抱きしめながら、冗談まじりに笑うドラコ。
なんだかくすぐったくて身をよじる。
「馬鹿ね、」
そう言う私の顔は、ドラコの肩越しに微笑んでいた。
トクン、とと心臓が音を立てたことには気付かないフリをしておこうと思った。
(気付いたところで)
(私は血濡れたデス・イーターなのだから)
家にドラコを連れて帰ると、ナルシッサが涙を流してドラコを抱きしめた。
「、ありがとう。あなたがいなかったら何が起きてたかわからないわ…」
「母上、僕よりが―――」
ドラコが事の詳細を話す。
レアリーとはぐれて彼女を探していたこと、
が闇払い5人と戦ったこと、
自分は透明呪文で隠れていて無傷だということ…
そこへルシウスがやってきた
「ドラコ、レアリー・ベッカーは私が家まで送り届けたから心配をするな。もう寝ろ。」
「しかし父上――――」
「話はまた明日だ、ドラコ。」
ドラコは不満げに自室へ向かう。
パタン、というドアが閉まる音を聞いてから私は話し出す。
「ルシウス、フォローありがとう…あとでドラコ宛てにレアリー名義で手紙を送るわ。」
はぁ、とソファに腰をかける
「でももう限界。ダンブルドアは私をもう疑っているだろうし、ドラコもそのうち気付くわ。」
私はレアリーを演じることに限界を感じていた。
「レアリーがだとバレてホグワーツにいられなくなったら」
「あたしは使えない女としてあの方に殺されるのかしらね。」
力無く笑う私の肩をナルシッサが不安げな様子でルシウスを見つめながら優しく抱く。
「…それは何とも言えん。」
ルシウスは渋い顔で私を見る。
「あの方がお失せになる前に下された命令だからな。期限は仰られていない。」
「そう…なの…」
ははは、と力なく笑ってみせると、ナルシッサは心配そうに私の肩を抱く。
「別にあの方に反発するわけじゃないわ。
ダンブルドア側につくくらいならあの方につきたいと思う。
だから腕に印を刻んだのよ。あの方の配下にいるという印を。
それにそれなりにあの方に尽くしてきたつもりよ。
でもあたしの"我が君"はベラだけなのに、ベラに会う前に殺されるなんて笑えない話よね。」
月は薄くなり、日が昇りはじめる。
「あいつら何て言ったと思う?"ベラトリックスはアズカバンで元気にしてる"ですって。」
ギリッと歯ぎしりをする。
「不死鳥の騎士団が再結成されたら全員殺してやるわ。ベラと両親の敵よ。」
冷静に言葉を放ち、曇りのない灰色の瞳から溢れ出た涙は頬を伝い、それは朝日でキラキラと光り輝いた。
ルシウスは私の頭をなでながら
「お前のベラトリックスへの忠誠心には時々ゾッとするものを感じるよ」
と言い、微笑んだのだった。
(だって)(私のすべては)
(ベラトリックス・レストレンジあってこそのものなのだから、)
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2010.1.4 shelly