皇太子夫妻の日常
「、お前僕をからかってるのか?!」
「そんなつもりないよ〜」
「いいや、あるね。だいたい君はいつもいつも…」
「ドラコ、あんまり怒るとハゲるよ?」
「僕はハゲない!」
「うそだ〜ドラコのお父さんもだいぶ後退してるじゃん」
「…それは言うな!!!」
あぁなんでいつもいつもこいつにはこうやって振り回されるんだ!
"紫と深紅ならどっちのドレスが良い?"
"紫じゃないか?"
"じゃあ深紅にするわ"
"髪はアップが良い?それとも巻いて下ろした方が良い?"
"上げた方が良いと思うよ"
"じゃあ巻いて下ろすわ"
"ねぇねぇ、ケーキかプリンか、どっちが良いかしら?"
"僕はプリンが良いな"
"じゃあこのケーキにしましょう"
「だいたいこの一連の流れ、おかしいだろ」
「そうかな?」
「僕のアドバイスは無視じゃないか!」
「だって、アドバイスは参考にするもので、鵜呑みにするものじゃないわ」
冷静に本を読み続けるを見ていると、だんだん怒る気さえ失せてくる。
それに「もしかしたら彼女の言い分が正しいのかも」とさえ思えてくるのだから
これこそ重症じゃないかと思う。
日曜日の昼下がり。
談話室でくつろいでいる彼女はゆったりとしていて
正反対に僕は立ったまま彼女を見下ろしている。
僕の言うことと正反対のことばかりする彼女は、一体何を考えているのか?
こうして週末はゆるりゆるり過ぎて行くのだ。
「ドラコ」
ある日、談話室で新聞を読んでいたら、が神妙な顔をして僕に近づいてきた
「なんだい?」
「あのね、私、婚約者が、できたわ」
「え?」
彼女は少し泣きそうな顔で、唐突に僕に話し出す。
「相手はスリザリンの1つ上の先輩なんですって。両親は婚約を受けなさいって言うの。」
「それで、君は、どうしたいんだい?」
「ねぇドラコ」
彼女はまた少し、顔を歪めて僕の隣に座る。
「婚約を受けるのと、受けないの、どちらが良いと思う?」
"紫と深紅ならどっちのドレスが良い?"
"紫じゃないか?"
"じゃあ深紅にするわ"
"髪はアップが良い?それとも巻いて下ろした方が良い?"
"上げた方が良いと思うよ"
"じゃあ巻いて下ろすわ"
"ねぇねぇ、ケーキかプリンか、どっちが良いかしら?"
"僕はプリンが良いな"
"じゃあこのケーキにしましょう"
「僕は、受けた方が良いと思う」
「そう。それじゃあ私、受けないことにするわ」
彼女は僕の言うことと必ず逆のことをするんだ
それはずっと一緒に居た僕がいつも悩み続けてきたことでもあった。
だから、少し、からかってやろうという、僕の小さないたずら
「僕は真剣に受けた方が良い、と思ってるよ」
「それは、私に、結婚しろって言っているの?ドラコ」
少し驚いたような、悲しそうな表情を浮かべる。
「あぁ、そう思ってる。君のためにも、君の家のためにも。」
「…そう。そうよね。」
彼女はまたさっきよりも顔をくしゃくしゃにして、でも涙だけはこぼさないように立ち上がった。
「私、両親に梟を飛ばしてくるわ。アドバイス、ありがとう。」
そう言って、踵を返したを後ろから抱きかかえる。
「離してよ、ドラコ。」
「君、人の話は最後まで聞くべきだよ」
「もう話すことはないわ」
「あるさ」
「なによ」
ずるずるっと鼻をすする音がして、あぁ、僕は少し、やりすぎてしまった、と後悔した。
「卒業したら、僕と結婚してくれないか」
こちらを振り返ったは、真っ赤になった頬に涙を一粒、ポロリとこぼした。
「あなたさっき私に…」
「プロポーズは受けるべきだって言っただろ」
「……からかったのね」
「いつものお返しさ、でもちょっとやりすぎた。ごめん。」
「ハゲちゃえばいいのよ、ドラコなんか」
憎まれ口を叩く彼女は少し俯いて、またポロポロと涙を流した
あまのじゃくなお姫様と、振り回される王子様のお話。
皇太子夫妻の日常
(ほんのすこしだけ)
(未来の話なのだけれどね)
2010.1.28 shelly