彼女の条件 



「ねぇドラコ、私、あなたが好きだわ」
「ついに狂ったか?」


談話室のソファに埋もれながら彼は怪訝な顔で私を見る。
眉間には皺が大きく3本も寄せられていて、
さっきまで食い入るように読んでいた本をパタリと閉じた。


「いいえ、失礼な人ね」
「いや、だって狂ったかと思うじゃないか!」
「それが失礼なのよ。で、どう思う?」
「何が?」
「私があなたを好きなことについて、よ」
「それは…」

頬をポッと赤く染め、もごもごするドラコ。

「ねぇ早く」

ちょっと急かせば、彼は頬を染めたままこちらを睨む

「僕は強引な女の子は好きじゃないし、だいたいお前は女として見てない」
「あら、そう。一応生物学上はメス、なんだけどね」
「お前を女だと思えって言う方が無理だと僕は思うね」



フンッ、と意地悪な笑みを浮かべて鼻を鳴らすドラコ。
まだほんのり頬は赤いけれど、表情はいつものドラコだ。



「朝起きられないし、寝癖はそのままだし、寝間着でその辺を歩き回るし、
スリザリン生のくせに朝食はポッター達と食べるし、やたらグレンジャーと仲が良いだろ?
宿題は決まって僕のを写すし、授業は寝てるし、僕の読書の時間を邪魔する、
そんなレディが存在すると思うかい?」

小馬鹿にした笑みで両手をあげるドラコ。

「そうね、言われてみれば、私、レディではないかも」
せいぜいガールといったところかしらね、と言って立ち上がる。

「お、おい、どこ行くんだよ!」
「早起きして、寝癖も整えるようにして、寝間着で歩かないようにして、
朝食はスリザリンのテーブルでとるようにして、パンジーとも仲良くして、
宿題も自力でやって、授業中も寝ないで、あなたの読書の時間を邪魔しない、
"レディ"になってから、あなたの前に現れるわ、失敬。」


ばふっ、と抱えていたクッションをソファの上に置いて談話室を後にする
ドラコは口をぱくぱくさせて、未だソファの上だ。










「あら。今日は一人なのね」
「えぇ、まぁね」

談話室をでて、廊下を歩いているとハーマイオニーとはちあわせる。

「マルフォイと一緒じゃないなんて、何かあったの?けんか?」
「ちがうわよ、ハーマイオニー」

ふふふ、と笑ってみせると、ハーマイオニーは興味津々!といった様子で駆け寄ってくる

「じゃあ何?てっきり私はあなたとマルフォイって、恋人だと思っていたわ」
「そう見える?」
「そりゃそうよ!そうじゃなきゃ、あいつ、あなたのストーカーだわ!」
「おいっ!!!」

クスクス笑っていると、ドラコの声が響く。



「なに?ドラコ。私まだレディにはなってないわよ」

後ろから慌てて追いかけてきたドラコを振り返ると、
ものすごく急いできたのだろうか、息を切らしている
(ハーマイオニーが小声で「噂をすれば、だわ」と言った。)



「大丈夫?そんな急がなくても…」


息があがったドラコは、またほんのり頬を赤く染めていた

「レディになる過程、僕が、見届けてやるよ」
「いいよ、そんな恥ずかしいこと」
「よくない!」

声を荒げるドラコに私は目を丸くして見せる。
ドラコがチラ、とハーマイオニーを睨んだので、彼女はクスクス笑いをやめた。

「それに僕は、別に完璧なレディを彼女にしたいわけじゃない」
「さっきまで言ってたことと違うけど?」
「あーーー!もう!だから!僕はちょっとバカで抜けてるお前が好きなんだよ!!!」




しん、と静まり返った廊下に響く、ハーマイオニーの噴き出す声。
その声でドラコはハッと周りを見渡す。





「ふふふ、ドラコ、レディは計算高いものなのよ?」

にんまりと笑ってやると、ドラコは頬を真っ赤に染めていて、
あまりにもそれが可愛くて、小さなキスを彼に送った。


「お前、」
「ドラコ、これを言うの、今日2回目だけど、私、あなたが好きよ」



ハーマイオニーはクスリ、と笑ってその場を去り、
私はぎゅ、と彼の手を握って早足でスリザリンの談話室へと向かったのだった。







彼女の条件



(私を追いかけてきてくれたご褒美に)
(小さなキスを、)



2010.1.30 shelly